予防歯科
予防歯科
「歯医者は、むし歯になってから行くところ」「歯が痛くなったら治療をしに行く場所」 長年、日本の歯科医療においてはこのように考えられがちでした。しかし、一度削ってしまった歯や、溶けてしまった顎の骨は、皮膚のすり傷のように自然に元通りになることはありません。治療を繰り返すたびに歯は確実にダメージを蓄積し、寿命が短くなってしまいます。
そこで現在、最も重要視されているのが「予防歯科」という考え方です。予防歯科とは、病気になってから治療を行うのではなく、病気を未然に防ぎ、健康な状態を長く維持することを目的とした歯科医療です。「痛くならないように、健康を守るために歯医者に通う」という新しい習慣が、あなたの将来の生活の質(QOL)を大きく左右します。
当院では、患者さまが10年後、20年後もご自身の歯で美味しく食事ができるよう、長期的な視点に立った予防プログラムを提供しています。

日本の成人が歯を失う原因のトップは「歯周病」と「むし歯」です。これらは決して「加齢のせい」だけで起こるものではなく、細菌による感染症であり、正しい知識と適切なケアによって十分に予防・コントロールが可能な病気です。
特に歯周病は「サイレントディジーズ(静かなる病気)」とも呼ばれ、初期段階では痛みや腫れといった自覚症状がほとんどありません。そのため、患者さまご自身が「歯がぐらぐらする」「歯ぐきから血が出る」と異常に気づいたときには、すでに重症化しており、最悪の場合は抜歯を余儀なくされるケースも少なくありません。自覚症状がないうちから定期的にプロの目でチェックを受けることが、歯を守る唯一にして最大の防御策となります。
近年、お口の健康状態が全身の健康に直結していることが、多くの研究で明らかになってきました。お口の中の歯周病菌が血管を通じて全身を巡ることで、以下のような様々な全身疾患を引き起こす、あるいは悪化させるリスクが高まります。
糖尿病
歯周病の炎症物質がインスリンの働きを阻害し、血糖値のコントロールを悪化させます。逆に、歯周病の治療を行うことで糖尿病の数値が改善するケースも報告されています。
心疾患・脳血管疾患
歯周病菌が動脈硬化を促進し、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めると言われています。
誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)
特に高齢者において、お口の中の細菌が誤って気管から肺に入り込むことで発症する肺炎の大きな原因となります。
つまり、予防歯科を通じてお口の健康を守ることは、「今ある歯を守る」という目的を超え、「将来の全身の健康と命を守るための医療」とも言える非常に重要な取り組みなのです。
予防歯科を継続的に受けている方は、むし歯や歯周病になりにくいため、結果的に大掛かりな治療(被せ物、インプラント、入れ歯など)を行う回数が大幅に減少します。「定期的に通院するとお金がかかる」と思われがちですが、生涯を通じたトータルの医療費で比較すると、予防歯科に通っている方の方が経済的な負担が軽減されることが分かっています。
予防歯科において、主役となるのは「歯科衛生士」です。歯科衛生士は、厚生労働省が定める国家資格であり、口腔機能の向上とむし歯・歯周病予防に関する高度な専門的知識と技術を習得した者のみが名乗ることのできる「予防のプロフェッショナル」です。
歯科医師が行う外科処置や診断を除き、予防を中心とした多くの工程に深く関わり、患者さまのお口の健康を最前線でサポートします。歯科衛生士による継続的かつ専門的なケアがなければ、一度治療したむし歯や歯周病は、すぐに再発を繰り返してしまいます。歯を長く守るために、歯科衛生士の存在は決して欠かすことができません。
治療前の検査・口腔内評価
歯周ポケットの深さの測定、歯ぐきの出血の有無、歯の揺れなどを細かく検査し、現在のお口のリスクを正確に評価します。
予防プログラムの立案
検査結果をもとに、患者さま一人ひとりの生活習慣やお口の状態に合わせた最適な予防計画を作成します。
専門的クリーニング(PMTC)
専用の機器を使用し、ご自身では落とせない頑固な汚れを徹底的に除去します。
歯周基本治療
歯ぐきの奥深くに潜む歯石(縁下歯石)の除去など、歯周病を改善するための基本的な治療を行います。
メンテナンス管理
治療完了後も、健康な状態を維持できるよう定期的な状態チェックとケアを行います。
セルフケア指導
患者さまの歯並びや磨き癖に合わせ、最適な歯ブラシの選び方からデンタルフロスの使い方まで、毎日の正しいブラッシング方法をアドバイスします。
当院では、質の高い予防歯科を提供するために「担当歯科衛生士制」を採用しております。これは、来院されるたびに違うスタッフが対応するのではなく、毎回同じ歯科衛生士が専属で患者さまのケアを担当するシステムです。
患者さまのお口の中の状態や生活環境、性格などは一人ひとり全く異なります。毎回同じ担当者がお口の中を拝見することで、患者さまとの間に深い信頼関係を築き、二人三脚でお口の健康を守り育てていくことが可能になります。
私たちは、目の前の処置をこなすだけでなく、「10年後、20年後も健康なお口で過ごしていただくこと」を最終的な目標としています。患者さまとのコミュニケーションを何よりも大切にしながら、長期的な視点で継続的にお口の健康をサポートいたします。
予防歯科の中心となるのが、歯科医院での「定期検診」と「プロフェッショナルケア」です。毎日の正しい歯みがき(セルフケア)は非常に重要ですが、それだけではお口の中の汚れを100%落とし切ることはできません。ご自宅でのケアと、歯科医院でのプロフェッショナルケアを組み合わせることで、初めて確実な予防が成立します。
PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)とは、歯科衛生士が専用の特殊な器具とフッ素入りペーストを用いて行う、専門的な歯のクリーニングです。
お口の中の細菌は、「バイオフィルム」と呼ばれるネバネバとした強力なバリアを形成して歯の表面に張り付いています。このバイオフィルムは、台所のシンクのぬめりのようなもので、うがい薬や通常の歯みがきだけでは完全に破壊することができません。PMTCでは、歯と歯の間、歯と歯ぐきの境目など、セルフケアではどうしても行き届かない部分に付着したバイオフィルムや着色汚れ(ステイン)を、専用機器を使って物理的に徹底的に破壊・除去します。
お口の健康状態やむし歯・歯周病へのなりやすさ(リスク)によって異なりますが、一般的には「3〜6か月に1回」の定期検診をおすすめしています。特に歯周病のリスクが高い方、全身疾患をお持ちの方、大掛かりな治療を終えたばかりでメンテナンス中の方などは、より短い間隔(1〜2か月に1回など)での通院が必要になる場合もあります。当院では、画一的な期間を押し付けるのではなく、患者さま一人ひとりのお口の状態やライフスタイルに合わせて、最も効果的で無理のない最適な検診間隔をご提案しております。
定期検診や歯石除去など、一部の予防処置は保険適用となる場合があります。
PMTCなどの内容によっては自費診療となることもありますので、詳しくはご相談ください。
基本的に、予防歯科の処置で強い痛みを感じることはほとんどありません。
歯ぐきに炎症がある場合は、しみることがありますが、できるだけ負担の少ない方法で対応します。
正しい歯みがき、フロスや歯間ブラシの使用、生活習慣の見直しが大切です。
当院では、一人ひとりに合ったセルフケア方法を丁寧にお伝えしています。
定期的に予防歯科に通うことで、むし歯や歯周病の発症を防ぎ、重度の治療が必要になる確率を減らせます。結果的に通院回数や治療費の負担を軽減できるケースが多いです。
フッ素には歯の再石灰化を促す効果があり、むし歯予防に有効です。特にお子さまの歯や、むし歯になりやすい方の歯におすすめです。歯科でのフッ素塗布は自宅での使用よりも高濃度で行うため、より高い予防効果が期待できます。
はい、妊娠中でも安全に受けられる処置があります。特に歯周病は妊娠中の健康や早産リスクにも影響するため、必要に応じて注意しながら予防ケアを行います。
はい、定期的なクリーニングや歯周病予防により、口臭の原因となる歯垢や歯石を減らすことができます。日々のセルフケアと組み合わせることで、口臭を予防・改善する効果が期待できます。
歯並びが悪いと磨き残しが増えやすく、むし歯や歯周病リスクが高くなります。その場合でも、定期検診やPMTCでしっかりケアすることで予防は可能です。
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